• 広島の魅せられる建物 -広島市環境局中工場-

    広島の魅せられる建物 -広島市環境局中工場-

    近年、ファッション業界でもサスティナブル(持続性)やリジェネラティブ(再生)など、環境負荷を考慮した取り組みが急速に拡がっています。個人的にもマイボトルを持ち歩くなど、ゴミの削減を心がけてはいますが、どうしても“ゼロ”にはできないのも事実、、。今回はそのゴミを追って、広島市内にあるゴミ処理場「広島市環境局中工場」へ行ってきました。 ゴミ処理場と聞くと、ギザギザ屋根に煙突がついた建物で、煙突から出る煙の影響で周りの空気が汚れているというのが私のイメージでした。が、この中工場、まるで近代美術館のような佇まいで外観から度肝を抜かれました。調べてみると、設計されたのは建築家の谷口吉生さんという方。簡単に経歴をご紹介すると、丹下健三都市・建築研究所での勤務を経て、計画・設計工房を設立し、谷口吉郎建築設計研究所所長、谷口建築設計研究所所長などを歴任された方です。代表的な作品には東京国立博物館の法隆寺宝物館やニューヨーク近代美術館、近年ではGINZA SIXを設計されています。とにかくすごい方が設計されているのです! さて、施設の外側から2Fに上がると、ecorium(エコリアム)という自由に見学のできる通路があります。左右はガラス張りとなっており、手前には植物が植えられています。奥に所狭しと並ぶ機械群はまるでアートのよう。有機物と無機物が融合した通路はかなり“エモい”空間でした。 そこを奥まで進むと海を望めるデッキに出ます。煙突から出るのは有害物質が取り除かれた無色無臭の煙のため、景観を損なうことはなく、悪臭が漂ってくることもなく、気持ちの良い潮風を感じることができます。デッキの先は広々とした公園となっており、海を眺めながらのんびりとした時間を過ごせます。 エコリアムの存在は「平和記念公園」と深い関わりがあります。平和記念公園は世界的な建築家である丹下健三さんが戦災復興のため設計されました。中工場は、その平和記念公園から伸びる吉島通りを真っ直ぐ南下した位置にあります。谷口吉生さんは丹下健三さんが敷いた平和の軸線(原爆ドーム、原爆慰霊碑、平和記念資料館を同一線上に並べた都市軸)を建物で遮らないようにと、建物の間を通って軸線が海へ突き抜けるように設計されています。広島の戦災復興とは切り離せない、広島ならではの設計と言えるのではないでしょうか。 ちなみに事前に予約をすれば施設内も見学することができます。せっかくなので私たちも事前に予約をして施設内見学。事前の案内では小学生と一緒に見学する予定でしたが、当日行ってみると私と同行者の2人だけに。少ない人数で見学させてもらうのはなんだか申し訳ない気分になりましたが、スタッフさんは快く施設内を案内してくださいました。 まず案内されたのは中央制御室。ここは焼却炉やボイラーをはじめ、工場内にある様々な機械の制御や、監視を行うところです。普段はコンピューターによって自動運転をしていますが、必要に応じて、手動運転に切り替わるそうです。正面に設置している大型モニターには、工場内の重要な設備の映像が映し出されています。 突如目に飛び込んできたのは、ゴミを掴むための巨大なクレーン。この巨体が動いている様は圧巻そのものです。写真ではわかりづらいかもしれませんが、軽自動車を簡単に掴めそうなくらい大きなクレーンです。クレーンの下には市内各所から集められたゴミが有り、クレーンでゴミを混ぜ、焼却しやすいようにしています。 施設内では、まるでSF映画に登場する宇宙戦艦の中にいるような錯覚に。どれもこれも規格外のスケールで男心がくすぐられます。 映画といえばこの中工場は、今話題の【ドライブ・マイ・カー】という映画のロケ地となっています。この記事を書いている間にも、日本映画としては史上初のカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞し、日本アカデミー賞最優秀作品賞を始め、あれよあれよと20冠を達成した物凄い作品なのです。「映画を見て広島へ来た」と遠方からもお見えになる方がいらっしゃるくらいの巡礼地となっています。知ったげに記事を書いておりますが、私はつい先日まで全く知らず、、、先ほど映画を拝見しました。人の多面性や感情が幾十に重なる深い映画となっているのですが、市内近隣の見慣れた風景が登場する度にテンションが上がる私でありました。 中工場の紹介は以上となりますが、書き切れていないこともたくさんあります。ぜひ実際に訪れて、このスケールを肌で感じてください。 余談ですが、実はこの記事、一度ボツをくらっています。というのも先日掲載された「ピロティから覗く広島名建築」の記事と勝負をして敗北したのが要因。それでも紹介したいという気持ちが抑えきれず、校正に校正を重ね、ようやく日の目をみることができました。文章力を身につけないといけないなと痛感した次第です。まだまだ成長が必要な私ですが、少しでも「いいね!」と感じたら、好評価を伝えにお店に遊びにきてください。次のやる気に繋がります! ご一読有難うございました。 ※広島市では被爆50周年の1995年に開始した「ひろしま2045 : 平和と創造のまち」プロジェクトを行なっています。このプロジェクトは、被爆100周年である2045年に向け、優れたデザインの社会資本を整備していこうとするものです。計画段階から建築、土木、ランドスケープ等のデザイン力に優れた設計者を選定、起用することにより、個性的で魅力ある都市景観の創造を推進しています。かつて同地にあった清掃工場の老朽化に伴い、広島市環境局中工場として立て替えたのもこのプロジェクトの一環です。 桑原 法大在籍店舗/DESCENDANT HIROSHIMA _______________________ In recent years, the fashion industry has seen a rapid spread of initiatives that consider our environmental impact, such as sustainable and regenerative fashion. Personally, I do things like carry around my own bottle and try my best to reduce waste, but the...
  • ピロティから覗く広島名建築

    ピロティから覗く広島名建築

    建築好きの人なら「ピロティ」という言葉をご存知の方も多いかもしれません。簡単に説明すると、建物の一階部分が“柱”のみとなっていて、2階から上の建物を支える形のことを言います。高床式住居を想像してもらえれば分かり易いかもしれません。元を辿れば、フランスの世界的建築家として知られるル・コルビュジエが提唱した、「近代建築の五原則」から来ていて、現代の建築において重要な礎となっています。構造的にもピロティとして一階部分が開くことによって、スペースの確保、見え方のぬけ感があることなど利点も多いです。難しい話になってしまいましたが、そんな「ピロティ」が広島の街並みに溶け込むように存在している事実をみなさんご存知でしょうか? ダントツ有名なところを言いますと、平和記念公園にあります「広島平和記念資料館」です。広島の象徴、平和の象徴と言われ日本を代表する建造物ですが、こちらは建築家丹下健三氏設計のもと1954年に建築されました。正面から見るピロティは、平和の火から原爆ドームまでを一本に貫く景色を切り取るようであり、また時には大勢の訪問者を迎えるゲートとして、そこに存在しています。丹下健三はル・コルビュジエの直系の孫弟子にあたり、「ピロティ」を自身の解釈として平和記念資料館に昇華させています。 後年に建てられた建造物で、同じくル・コルビュジエのDNAを感じることができる場所があります。それが「基町高層アパート」です。基町高層アパートが位置するのは太田川の川縁。戦時中は軍用地として使われ、第二次世界大戦時には陸軍病院として使われていました。原爆投下で全てが焼け野原になった後からは、行く宛もない人たちの不法建築不法住宅が並びました。その後、広島復興に伴った人口増加に対する再開発政策によって建築されたのが「基町高層アパート」です。あとから知りましたが、こちらもル・コルビュジエのDNAを継ぐ建築家大高正人氏の設計で、欧州の集合住宅で見るような重厚な外観と、それを支えるピロティからは太田川へのアプローチが覗きます。ぐるりと楕円状にアパートが配置され、全ての屋上には庭園があり、アパートが囲む中央には緑が茂る公園が配置され、その公園真下にはアーケード街が並びます。考え抜かれた構成と、その建物の重厚感は1970年代に完成されたものとは思えませんでした。 基町高層アパートに隣接するところにも、違う年代での「ピロティ」を見ることができます。「広島市立基町高等学校」です。基町高校は2000年に校舎が改築され、現代的な外観にリニューアルを果たしました。設計は京都駅ビル、札幌ドームなどを手がけた原広司氏。基町高校はアニメ映画「君の名は」で主人公瀧くんが通う高校のモデルに採用されたのが有名ではないでしょうか。(内部は映画で見ていただくのもいいかもしれません。)校舎を支えるピロティはグランドと広島城天守閣を結び、現代的な建造物でコンクリートの圧力がある中での抜け感でバランスを保っています。基町高校のピロティが、丹下健三の「広島平和記念資料館」からのオマージュであるかは不明ですが、不思議なリンクを感じてしまいます。 最後にご紹介するのは、僕の地元に近くなりますが、安佐北区可部に位置します、「ステーキハウス染と茶」です。ログハウス風の外観を下部からピロティが支え、一階部分は車の入る駐車場になっています。正面背面ともにガラス張りとなっており、裏側の田園風景を切り取ってくれています。設計は高須賀晋氏で1970年代に「虹山画荘」として完成し、現在はレストランとして営業されています。建築もさることながら、こちらのハンバーグランチならびにステーキランチは味もコスパもパフォーマンスが高いです。著者お墨付きですので、建築探訪ついでのランチにもおすすめです。 今回は「ピロティ」をキーワードにして、駆け足ですが広島の見るべき行くべき建築群をご紹介いたしました。コロナ禍で思うように外出できない世の中ですが、人混みを避けた楽しみとして訪れてみてはいかがでしょうか。 箕本 勇希在籍店舗/ref.記事一覧 _______________________ Hiroshima Architectural Masterpieces with PilotisIf you are interested in architecture, you may know the word “Pilotis”. To explain it briefly, it is the construction of a building that has only “pillars” on the ground floor, and they support its upper floors of the building. It may be easy to understand if you think of raised-floor-style...
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