2025.10.24

A.PRESSE で過ごす秋冬 Vol.2

BLOGをご覧の皆さまこんにちは。前回に引き続き石井(優)が筆を執っております。
先日公開されました【A.PRESSE】のブログ、ご覧いただけましたでしょうか?
ありがたいことに店頭でも「見ました!」の声をいただけて励みになっておりますので、引き続きぜひご来店された折に機会がございましたらぜひスタッフに伝えてみてくださいませ。

さて、引き続き今回も【A.PRESSE】を題材としたブログをお届けするのですが、今回は趣向を変えまして、【A.PRESSE】の魅力のひとつである” 素材 “ にフォーカスしたブログをお届けしようと思います。

洋服における「素材」、仕上がりや着心地を大きく左右する要素の1つです。
わたし自身現職含め、十数年アパレル業界に身をおいており、元来無類の洋服好きともあって、本当にたくさんの洋服に触れてきたと自負しております。
【A.PRESSE】を初めて見て袖を通したときの感想は「洋服としての完成度が非常に高い」というものでした。

「バックボーンのあるアイテムを、現代のファッションシーンに合わせて作成している」

端的に言うとこういう具合かと思います。
シルエットメイキングや加工といった、一目でわかる部分も多いです。
そして、「素材」という点も、それらを構成する重要なピースの1つであると断言できます。

大変長い前置きとなりましたが、今回は【A.PRESSE】における” 素材の魅力 ” にフォーカスしたブログをお届けいたします。



①ウールニット


ブランド大定番のアイテム。SSはコットンニット、AWはウールニットでの展開で、デザインとしても、ポロカラーシャツ/カーディガン/クルーネック/ヘンリーと幅広く作成しており、【A.PRESSE】のTOPS類の中でも中核を担うアイテムです。

前回のBLOGでもこちらの素材を使用したヘンリーネックタイプをご紹介しましたね。

それでは早速素材へフォーカスしていきましょう。

まず大前提として、獣毛(ウールやカシミヤなど獣の毛)は基本的には細ければ細いほど高品質とされます。
(それでも作りたいニットの風合いや動物ごとの毛の特性によって必ずしも長い=良いにはなりません)

そして、細ければ何がいいかというと、

i  ) ” 肌当たり “
ii ) ” ニットの風合い “

に影響してきます。

獣の毛は髪の毛のキューティクルようにウロコ状の表面をしており、この大きさが肌当たりにも影響します。
(顕微鏡でしか見えない世界なのにすごいことですよね…)
繊維が太いとそれだけウロコ1枚1枚の大きさも大きくなり、いわゆるニットにおけるチクチクも発生しやすくなります。
カシミヤが非常にチクチクしにくい、というのはそもそものウロコの小ささ、加えての繊維の細さ、柔らかさゆえなんですね。

そして繊維が細いと、出来上がる糸ももちろん細い。細い糸で生地を編んだり織ったりすると非常にしなやかに、美しい光沢が出ます。

これが生地が洋服に与える影響です。

と、ここまでが大変長い前提でしたが、今回こちらの【A.PRESSE】のニットに使用しているウールは14.5マイクロン。
数値と見たことがない単位で「?」かと思いますが、どんなものかといいますと、

「カシミヤとほぼ同じ細さの繊維」

なのです。それゆにえプライスも気張った感じになりますが、肌当たりは抜群、ウールのクオリティの高さが伺い知れる仕上がりになっています。



「じゃあカシミヤでいいじゃん」、と思われるかとも思いますが、カシミヤで作れない(大変作りにくい)理由もちゃんとあります。
(書こうとしたのですが、さすがに長過ぎるような気がしましたので、気になられました方は店頭にてお尋ねくださいませ)

つまり【A.PRESSE】のウールニットは、ウール/梳毛で出来うる最高峰のハイゲージニットと言える素材/生地のクオリティを持っています。

広めに取られた身幅やアームに対して、キュッと締まる裾リブ/袖リブがやや丸みを帯びたシルエットを生み出し、スウェットライクな丸みを帯びた形がリラックスした印象を与えつつも、ニットらしい緊張感も同居するアイテム。

「素材の良さはスタイルの垣根を超える」、と常々思っていますが、こちらも良い例です。
ニットで王道の着こなしを楽しむもよし、スウェットライクに楽しんでいただけるのもアリです。



②カスタムパンツ



こちらも【A.PRESSE】が継続的に展開している、通称カスタムパンツ。
カーゴパンツを踏襲したデザインながら、「サイドポケットが前オーナーの手によって取り外された」、というストーリーのあるアイテムです。
毎シーズン展開してるパンツに加え、今シーズンは同様のデザインのジャケットもご用意しております。

こちらも目を引く生地をしていますが、その肝となるのが「顔料コーティング」というもの。
ものすごく簡単にご説明をいたしますと、

「色の落ちやすい色の付け方」を採用している

洋服に精通されていない方でも「染料」という言葉はなんとなく聞いたことがあるのではないでしょうか。
その名の通りで、染める目的の材料、ということです。
「染める」と聞くと、生地の奥深くまで色がしっかり染み込んでいるイメージはたやすく膨らむと思います。
(細かい話ですが、染料を使っていたも染め方次第で、奥深くまで染まらないものもございます)

対して「顔料」というのは生地の上に色が「乗っている」イメージを持っていいただけるとわかりやすいと思います。

「染料」と「顔料」には大きくこのような違いがございます。
そして今回採用しているのは、「顔料」の方です。



そこに特殊な加工を施すことで、ひび割れたような、独特な風合いが生まれ、着用/洗濯を繰り返すことで、徐々に色は抜け、さらに箔が付くように。

薄着の季節でもパンツの存在感のおかげで主張するスタイルを作ることが出来、重ね着をする季節にはごちゃごちゃしすぎることもない
=履く季節を格段に長く取れる、賞味期限の大変長い洋服です。



③シルクヘンプ

前シーズンよりも更に肉厚になり登場したヘンプシルクダック素材のワークジャケットとワークパンツ。
一見すると作業着由来らしい、タフな素材感。その裏側には何があるのかを探っていきたいと思います。



生地はワークウェアに馴染み深いダック生地。
太番手の糸を高密度に打ち込むことで、肉厚で重労働にも耐えうる、耐久性に富んだ作業着にうってつけの生地です。
そのまま作ってしまうと、コットン100%のガチッとした素材になってしまい、悪い意味で本格的になりすぎてしまいます。

それでは、【A.PRESSE】のアイテムが持つ「品の良さ」はどこから生まれるのか。

今回の素材の中でカギを握るのは、「ヘンプ」と「シルク」です。
それぞれ紐解いていきましょう。

i  ) ” ヘンプ “

麻の一種です。実はアパレル界隈では近年その価値が見直されている素材のひとつでもあります。
(そして、日本で言うところの「大麻」と同義なのです…悪用ダメゼッタイ。※洋服になっているものは何の害もございませんのでご安心を)

環境負荷の少なさ、生育の早さといった、近年のアパレルが抱える問題への効果的な解決策でもあり、リネンのような機能性を持ち合わせているため、最近は代替素材として使用されることも少なくありません。

そんなヘンプは麻素材の仲間たちのなかでも、最も硬さのある素材。
と同時に着用/洗濯によってコシが抜け、どんどんと柔らかさが増してくるのも楽しく、わたしのような経年変化大好き人間からすると、とにかくたくさん着用して洗濯したくなる素材です。

そんなヘンプを使った糸と、「超長綿」という、とーーーーっても高品質なコットンを混ぜた糸を、後述するコットン×シルクの糸と掛け合わせて織り上げたのが今回のダック生地です。

ii ) ” シルク “

おなじみ、シルクですね。実は【A.PRESSE】の洋服にはよく使われており、「こんなものにまでシルクが?」というケースが非常に多いです。
今回も例に漏れず、こんなタフな生地にもシルクが混ざっています。

美しい光沢を携え、柔らかなドレープを生む印象が強いシルクですが、実はシルクは加工の仕方によっては白化(フィブリル化)という現象が起きます。
漢字が示す通り、白けたような風合いが出ることを指します。

通常の美しいシルクの場合、せっかくの鮮やかな色合いが損なわれてしまうのですが、今回のヘンプシルクダックの場合、「生地の風合いが出てきた方が格好いい」のようなケースではむしろメリットとして機能します。

さらに加えると、その柔らかさがプラスされることで、本格的になりすぎない、「今」の空気を纏ったダック生地が誕生します。



こうして出来上がったのが、今回のヘンプシルクダックというわけです。

ワークウェア本来の迫力や重厚感は損なわず、シルク/ヘンプの素材によって柔らかさや着心地、風合いも楽しめる。

本物を忠実に再現するのではなく、あくまでも現代のファッションシーンを踏まえての「本物」を提案する、【A.PRESSE】の魅力が詰まった生地、商品に仕上がりました。



さて、【A.PRESSE】のBLOGが2週続けてということもあって、またまた超大作となってしまいました。

今回は” 素材 ” にフォーカスしてのブログとしてみましたが、お楽しみいただけましたでしょうか?
正直、かなりニッチな部分も多かったので、ご覧になる方によっては「?」も浮かんだかと思います。

それでも、【A.PRESSE】におけるものづくりが一部でも「こういうことなんだ」と、ご理解賜ればそれは筆を執っている側からしても意味のあるお力添えが出来たかと思います。

洋服には文章だけではどうしても伝えきれない部分がたくさんございますので、興味がございましたらぜひ店頭で実物をご覧になってみてください。


皆さまのご来店を心よりお待ちいたしております。



 

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