ホテルフレックス。というよりも、昭和生まれの私にとっては、阪神タイガースの宿舎「吉川ホテル」のイメージが強い。広島も国際都市となり、外資系から大手グループホテルが存在する中、それらと比べて特出するところはないけれど、ここは何か、よそにはない広島らしさを持っている。
客室から外を眺めてその理由がわかった。目の前に川が見える。それも、一つの川が二股になり、三角州の街を象徴するように、橋が何本も架かっている。なるほど。広島育ちの私にとって、子供の頃からよく目にする、戦後すぐの焼け野原の写真とぴたっとあてはまる。建物は変われど、地形は変わらない。この場所そのものが広島という街を象徴しているのだ。そんなホテルフレックスの面白いところは、3度も大きなリニューアルをしていること。しかも、時代に合わせて、その都度ガラリとスタイルを変えている。
スタートは明治5年の「吉川旅館」。広島に2つしかない一等旅館のうちの1つとして当時の資料にも記されていることからも歴史が伺える立派な老舗、つまり、今でいうところの5つ星だ。しかし原爆投下で焼け野原となった後、一度は廃業を決めたという。戦後、マンションでも建てようと基礎工事を開始した矢先、また旅館をやってほしいという近隣の人々からの声が多く、急遽旅館の新築工事に変更したそうだ。
この話を聞いた時ふと、東北大震災が頭をよぎった。大きな傷を負った街で、もう一度商売を始めようと立ち上がることは、想像以上に大変で、だからこそ、地域の人々にとっては、希望であり、力であり、願いだったのかもしれない。
こうしてシーズン2がスタート。名前も吉川旅館から吉川観光ホテルに変わり、宴会場や大浴場を備えた観光ホテルへと変身を遂げた。まさに昭和の復興の時代をたくましく生き抜いた地域密着の観光ホテルだった。
そして時は1994年、広島でアジア大会が開催された年に再び建物を新築し、現在のホテルフレックスとしてシーズン3がスタート。外観はこれまでとは全く違う、鉄筋コンクリート打ちっぱなし。今でこそモダン建築の手法として一般的に知られているが、地方都市広島ではまだ認知度も低く、これって建築中?と聞かれることも珍しくなかったそうだ。ホテルのコンセプトはスモール&コンフォタブル。言い換えると小さくて快適なホテル。大切にしていることはシンプルでスタイリッシュでスマートであること。うれしいことに、リーズナブルでもある。今回選んだ最上階の部屋は大型ホテルのようなどーんとした空間ではないが、コンパクトでシンプルなベッドルーム、緑のあるテラス、窓の外には広島ならではの川のある風景を楽しむことができる。
さて、現在。1階にカフェ43(キャラントトロワ)がオープンし(ここのパンガレット、おすすめです)、宿泊客でなくても気軽に利用できるようになった。実際、打ち合わせに利用することも多い。最近では、海外のホテルにいるような錯覚に陥るほど外国人宿泊客の姿を目にする。次のキーワードは国際化?と勝手に想像しつつ、シーズン4へ!? 今後、どうなっていくのか、私も楽しみにしている。
最後に、refnet.tvからの旅のスタイルのご提案。香りを旅に連れて行ってはどうだろう? 家で使っているいつものアイテムやいつもの香り。旅先で新しいものを目にする喜びと、ふっと感じる日常の心地よさ。刺激と癒やし、両方とも旅にはなくてはならない必需品だ。
Hotel FLEX Hiroshima
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