2016.08.01

世界でひとつのマリッジリングが生まれるまで

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今回の特集は、あるお客様の一言から始まった、世界でひとつのマリッジリングが生まれるまでのお話です。

ここに一組の若い夫妻が、あるイギリス人デザイナーに向けて熱い思いを綴った一通の手紙がある。
これを読んだデザイナーはぜひこの夫妻に会いたい! と来日を決めた。
そのデザイナーとは、ウサギがトレードマークのブランド“BUNNEY”を立ち上げた、アンドリュー・バニー氏(以下:アンドリュー)である。

 

Dear Mr. Andrew Bunney


We really appreciate your fantastic work.

Your rings are just simple at first sight. 
However, we notice the design, the icon of Bunney, the hallmark and the carved initial are very delicate, 
elegant and unique in a moment. Whenever we look at the ring, it makes us feel happy and honored.

There’s a six year age difference between my husband and I. 
We were born in a faraway place and grew up in different environment. 
Three years ago, when we met for the first time, we were very surprised at having similar tastes 
for music, fashion, drink and food. Naturally we have fallen into love and kept good relationship. 
January 2014, he proposed to me and we got married. 
When we looked for the wedding rings matched well with our character, Mr. Nakamoto introduced Bunney to us. 
Needless to say, we immediately liked it and got a lot of pleasure from hearing your acceptance of the offer. 

The most important common sense among us is loving our family deeply.
We will live with great respect each other and make a happy family with the rings.

In the future, we would like to visit you and thank for you directly. Thank you for your kindness to accept our order.

Regards,
Mami & Kojiro

  

親愛なるアンドリュー・バニー様

あなたの素晴らしい仕事に、本当に感謝しています。
この指輪は一見するととてもシンプルなものですが、バニーのアイコンと品質を保証する刻印、
とても繊細に彫られたイニシャル、エレガントさ、独特な存在感に、私たちはすぐに気が付きました。
この指輪をみるたびに、すごく幸せで、誇らしい気持ちになります。
私たち夫婦の年の差は6歳。遠く離れた場所で生まれ、違う環境で育ちました。
そんな私たちが3年前に初めて出会った時、音楽、ファッション、食など、お互いの好みに共通点が多いことに驚きました。
自然と恋に落ち、良い関係を築いてきました。2014年1月、彼からプロポーズされ、結婚。
自分たちにしっくりくる結婚指輪を探していた時、中本さんがバニーのことを教えてくれたのです。
言うまでもなく、私たちはこの指輪を気に入り、あなたがオファーを受けてくれたという知らせを聞いて、とてもうれしく思いました。
私たちが一番大切に思っているのは、家族を深く愛することです。
これからも、お互いを尊敬し合い、この指輪とともに幸せな家庭を築いていきたいと思います。
いつか、あなたのもとを訪ね、直接お礼を言うことができたらと思っています。
私たちの依頼を受けていただき、本当に、ありがとうございました。 


敬意を込めて、まみ&こうじろう

 

2015年5月某日。
ついに夫妻とアンドリューが対面する日がやってきた。
ご主人の肩には一眼レフカメラがぶら下がっていて、二人の薬指にはお揃いのマリッジリングが光っている。
ご主人はホワイトゴールドとイエローゴールド、奥さんはホワイトゴールドとローズゴールドのすっきりとしたバイカラーのデザインだ。
お二人にはよく店頭でお会いするが、いつもの気さくで柔和な印象はそのままに、心なしか緊張しているようにも、気分が高揚しているようにも見える。

 

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“袋町の生協”を掲げるref.では洋服や日用品、はたまた“これ売り物だったの?!”と驚かれるような国内外のアンティーク家具も置いている。
そんなこともあり、お客様から“◯◯ありますか?”と尋ねられることも少なくない。
そんな時は、お客様のご要望に沿うような商品や、それに近いものを紹介させていただくこともあるし、新しく提案させていただくこともある。
ここでご紹介するのは、お客様からのご要望が、思いもよらないかたちで実を結んだストーリーです。

今からさかのぼること二年余。
ref.に時折ご来店になるお二人は、会話の中でstaffにある相談をされます。
「僕達、近々結婚を考えているんですけど、お勧めの結婚指輪教えてもらえないですか?」
その言葉を聞いたstaffが、自分だったらどのブランドを選ぶだろう?
とイメージしたとき、量産型のブランドではなく直感的にひらめいたのが“BUNNEY”だった。
「私ならBUNNEYにするな!」
その一言にお二人はびっくり。
それもそのはず、当時BUNNEYにはマリッジリングを作るという前例はなく、想像すらしていなかったから。
BUNNEYといえば、普段時計以外のアクセサリーやジュエリーを身につけない人でも、“BUNNEYなら・・・。”
と言わしめる、シンプル且つデザインに透明感と潔いエッジの利いたフォルムが持ち味のシルバージュエリーのブランド。
ref.では開店当初から取り扱っている思い入れの深いブランドだった。

 

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staffの意外な提案に、
「もしそれが実現するならこんなに嬉しいことはない!」とお二人も興奮気味!
同氏と仕事上のパートナーであり、友人でもあったstaffは早速アンドリューに依頼したところ、
考えてくれるとのことでしばし待つことに。その間約半年。
アンドリューから、“良いデザインを思いついたから、二人のサイズを教えてほしい”との連絡が!
ついに世界で初めてとなるBUNNEYのマリッジリングが動き出したことに、私達も興奮を隠せなかったことを覚えている。
サイズを聞いたアンドリューは、そこから制作に入り、発案から一年後、心待ちにしていたお二人の元に、ついにBUNNEY初のマリッジリングが届いた。

お二人のために作られたリングには、この世に存在する全てのものには始まりがあり、
その始まりにはこれから後に作られていくものとは違う、目には見えない“特別ななにか”が込められている気がしてならない。
デザインが生まれてくる際に働かせるイマジネーションやそれを元に描くスケッチ、まだ見ぬ日本人の若い夫婦を思い浮かべながら、
いわゆるファッションを楽しむ装飾のあるリングではなく、一年365日離れることなく身につけられるリングをつくるということ。
それはマリッジリングをつくるという経験が初めてであったアンドリューにとっても新鮮なことであり、
イマジネーションの先にある作り手自身の意志をも反映した、まさしく“一分の一”そのものだったのではないだろうか。

リングのさりげない佇まいは、作り手が“初めて”に込めた全ての熱量がひんやりとしたゴールドにこめられ、
夫婦のこれからがそのまますっと染み込んでいく余白があるように見えた。
さらには、それぞれのリングに二種類の金属をあしらうというアイデア。その交わる二色とは、男と女=夫婦そのものに見立てられ、
これから同じ道を共に歩いてゆく一組のカップルに用意されるにふさわしいデザインである。と、確信するのは私だけであろうか。

 

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さて、お二人とアンドリューが対面した日へ戻ろう。
その日、アンドリューは青と白のギンガムチェックのシャツに紺色のパンツ、足元にはスリッポン、アクセサリーは時計、
胸元と手元に自身のジュエリーをさりげなくプラスした装いで私達の前に現れた。
全体に優しくも凛とした空気をまとうアンドリューの佇まいは、自身が手がけるブランドイメージそのものであった。

初めての対面で、お互いに顔をほころばせたのは言うまでもない。
お二人は少し興奮気味に感謝の言葉を述べ、アンドリューも嬉しそうにそれに応えた。
記念撮影をしましょう! と、一緒にお店の外へ。
この日はThe Trunk Market 4回目の開催日。
蚤の市にふさわしい真っ青な空の下、会場である隣の公園では、掘り出し物を目当てに沢山のお客様で賑わっている。
ref.にもその空気は漂っていたはずなのに、お二人とアンドリューのリングによって繋がれた特別な縁を前に、
その場所だけが切り取られて違う時間が流れているように感じられた。
アンドリューを真ん中に、薬指にリングをはめてポーズをとるお二人を、ご主人のカメラでお撮りした。
彼らから漂ってくる優しくふんわりとした空気がとても心地よかった。このひとときに感じた思いは決して忘れることができないだろう。

お二人との会話から始まり、staffの直感的なひらめきから生まれたこのリング。
その“一分の一”のストーリーをはじまりにして、その後もBUNNEYのマリッジリングが作られることが決まったのは、それからしばらく後のことです。

※現在は取扱を終了しております。